+αな暮らし

メーカーでインハウスのファシリティマネジャーとして建築・不動産に関する仕事をしています。このブログでは建築・不動産・施設管理系の資格挑戦についてと、革製品を始めとした愛すべきプロダクトについて書いています。

何かと揉めがちな敷地の境界立ち会いで気を付けることと、揉めたときの筆界特定制度についての落とし穴

施設の管理をしていると、敷地の境界立ち会いをしなくてはいけないことが出てくる。境界立ち会いが発生するのは主に敷地の境界確定のときだ。

 

例えば所有している土地を売却するときなどは、買主によっては敷地の境界確定が購入条件ということが多いし、隣地の所有者から立ち会いを求められることもある。

 

今回の記事は、何かと揉めがちな土地の境界線についての注意事項と、法務局の筆界特定制度について書いていきたい。

 

【CONTENTS】

 

そもそも土地の境界線とは

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まず、土地の境界線というのは大枠で下記の4種類に分けられる。

①所有している範囲の境(所有権界)
②土地を使用している範囲の境(占有界)
③賃貸等で借りてる範囲の境(借地界)
④登記されている筆と筆の境(筆界)

④の筆界の筆と言うのは土地の数え方を指している。

①の所有権界は「お互いの所有者で任意に設定できる境界」で、いつでも自由に個人間の契約、時効取得の援用などにより設定できる境界だ。対し④の筆界は「登記された時に創設された筆と筆の境界」であり、個人間の契約や立会等で変更することができない境界となる。日本で起きる境界紛争のほとんどが①と④の相違により起きていると言われている。

 

土地の境界立ち会いで確認しているのは、①の所有権界を確認、署名押印を得て、④の筆界についても①と④が同一であるという認識が一致しているかを確認している。

この④の筆界が重要になるのだが、そもそも「④の筆界はいつから存在するのか?」「④の筆界を復元測量すれば、境界立会は不要ではないか?」という疑問を感じる方もいるだろう。いつから存在するかということについては、通常考えられるのは区画整理などで換地登記された土地、通常の土地分筆登記で登記申請がされ登記が完了された土地などになるが、境界紛争が起こる原因の多くは、登記制度(厳密に言えば、土地台帳、地券交付)が始まったときからあった境界が隣接所有者が考える境界線と一致しないことで起きると考えられる。

 

登記制度っていつできたの?

登記制度(土地台帳、地券交付)がいつ出来たかについては、明治時代まで遡り、廃藩置県に伴って県での正確な年貢徴収の調査(地租改正事業)、測量に基づき、地券(後に固定資産税と登記簿に分かれる)を発行し、これに附属する図面を保管するというのが起源と言われている。

ここまで古いと現実的に明治時代(約100年以上前)の測量成果を基に境界復元測量を行うのは下記の理由から不可能と言われている。

①百年以上前の測量精度と現在の測量精度では大きな違いがある。
②明治時代にどのように測量をしていたかを知る人もいない。
③元々税徴収のために測量をしていたので、境界がどこかという概念が当時には無かった。

 

境界立ち会いの際に注意しておくべきこと

境界立ち会いは敷地境界確定のためと最初に書いたが、この境界確定業務は通常、土地家屋調査士に依頼する。依頼を受けた土地家屋調査士は現地の復元測量を行い、図面を作成した上で隣接者や道路管理者との立ち会い日を設定し、当日の進行をしてくれる。

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境界立ち会い前に気を付けておくべきことは、土地家屋調査士と密に連絡を取り合い、測量の結果、隣接者と揉めそうな部分はないか事前に把握しておく事が重要となる。前述した通り、復元した境界線と相手(隣接者)が考える境界線との相違が揉める原因となるので、揉めそうな境界線については、事前にどこまでなら妥協できるかを考え、社内で上長に共有した上で土地家屋調査士に相談し、境界立ち会いに望んだ方が良いだろう。

 

欲を言えば土地家屋調査士は口が上手い(復元測量した境界線で相手を納得させてくれる)方であれば言うことなしだ。隣接者からの異論に対し、上手く説明できない、しどろもどろになってしまうような方だと相手はまず納得してくれない=境界確認の判子をいただけない。

 

復元測量した境界線で合意をいただけないばかりか、予め検討しておいた妥協した境界線でも合意できない場合は、隣接者と話し合いを継続していく事になるわけだが、そこから先はなかなか合意まで持っていくのは難しい。余程こちらが境界確定を急いでいて、相手の要望を全て受け入れるような判断を経営者がすれば別だが、通常であればそうはならないと思う。なので、この場合は不調も覚悟する必要がある。

 

法務局の筆界特定制度について

境界線が確定できないときに法務局で筆界を特定してもらう「筆界特定制度」という制度がある。しかし、これは筆界を特定するだけであり、所有権界は特定できない。

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また、お互いが「ここでいい」というところを筆界にすることはなく、申請処理期間が長くなる(標準処理期間6ヶ月+申請受付に数ヶ月)につれ、申立人や隣接者も根負けし、中には「もう話し合いで決めよう」と言ってくる人もいるが、この主張は聞き入れられない。つまり、お互いが納得するような境界を特定してあげるような優しいものではなく、どちらかといえば、登記制度維持の為、裁判に上告された場合の為に、筆界を特定するもので、民意や現地物証、立会証明、国土調査図面は二の次となる。

 

その結果、境界立会で確認してきた境界を無視したりするので、今まで積み上げたきた立会証明や測量成果も無駄になり、且つ修正の説明や、押印の取り直しなども必要となる可能性がある。また、結果に納得いかない場合は、裁判を起こすことも可能であることから、「筆界特定制度」の利用を検討されている方は土地家屋調査士に相談の上、十分注意して実施可否を検討していただければと思う。

 

以上、何かと揉めがちな敷地の境界確定と、筆界特定制度の注意点でした。

 

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