+αな暮らし

メーカーでインハウスのファシリティマネジャーとして建築・不動産に関する仕事をしています。このブログでは建築・不動産・施設管理系の資格挑戦についてと、革製品を始めとした愛すべきプロダクトについて書いています。

その建物、未登記、未課税になっていませんか?

建物を新築(増築含む)した際、建物表題登記を申請する必要があることをご存じだろうか?

 

これは不動産登記法という法律で決まっている建物所有者の「法的義務」となる。

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建物表題登記とは

前述の通り、建物を新築や増築した際に行う登記で、工事完了後、一ヶ月以内に申請する必要がある。

 

表題登記に記載される事項

建物の表題登記を申請すると、不動産登記簿の冒頭部分にある「表題部」に下記の事項が記載されることになる。

  • 所在
  • 家屋番号
  • ①種類(居宅 等)
  • ②構造(木造瓦葺2階建 等)
  • ③床面積(建物の階毎の床面積 ※㎡表記)
  • 原因及びその日付(⚫︎年⚫︎月⚫︎日 新築 等)
  • 所有者(住所と氏名)

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法的な申請義務があるのはこの表題登記だけになるが、その所有権を他者(第三者)に主張するためには、所有権の保存登記を行う必要がある。

また、銀行等から融資を受ける際には、住宅ローン契約にもとづく「抵当権設定登記」も行われる。

 

表題登記は誰が行うの?

建築主(所有者)が自分で行うこともでき、かつて会社の社宅を新築した際は、私は自分で登記申請を行ったことがある。

しかし、測量作業や登記図面等の作成もあるので、土地家屋調査士に依頼するのが一般的だろう。

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登記対象の建物は?対象外はあるの?

登記対象の建物は「屋根及び周壁を有し土地に定着した建造物であり、その目的とする用途に供し得る状態にあるもの」となる。面積に関する定義はないので、上記条件を有していれば、仮に5㎡程度の建造物でも登記対象となる。

登記の対象外になる部分としては、壁のない駐輪場や、フェンスで囲われたゴミ置き場、ベランダ、共用廊下などは対象外になるため、必ずしも建築確認申請の面積とは一致しない。

 

罰則はあるの?

法的義務のため、罰則規定があり登記違反した場合には「10万円以下の過料」となるが、実務的には表題登記を行わかなったからと言って、この罰則が適用された事例はないだろう。

ただし、コンプライアンスの観点からは、必ず登記は行うべきであると断言できる。

 

続いて、固定資産税についても書いておく。

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固定資産税とは

土地や建物にかかる税金(地方税)であり、固定資産の所有者が、その資産価値に応じて算定された税額を市町村に納めることになる。

 

固定資産の種類

固定資産の種類としては、下記の項目がある。

  • 土地(田畑、住宅地、池沼、山林、原野 等)
  • 家屋(住宅、店舗、工場 等)
  • 償却資産(機械、器具備品、建物の付属設備 等)

 

固定資産課税対象の建物は?対象外はあるの?

固定資産税が課税される家屋は、不動産登記規則第111条に定められた要件、すなわち外気分断性、土地への定着性、用途性を満たす建物であるため、一般的には不動産登記が必要な建物=課税されると考えておけば、大きくは間違わないだろう。ただし、厳密には一致しないところもある。

例えば、私の会社がある自治体では、駐輪場であれば、屋根+三方向の壁があれば対象となるが、二方向の壁の場合は対象外となる。また、物置程度の場合、基礎の固定状況により判断され、基礎に緊結されていれば課税対象、四隅ブロック固定程度であれば対象外と言われている。

このように細かな規定があるため、正確には管轄している自治体の税務課なりに確認しに行くのが間違いないだろう。

 

新築・増築された際に、自治体はどう把握しているのか

大きく下記の把握ルートがあると言われている。

  1. 建築確認申請書からのルート
  2. 登記済通知書からのルート
  3. 航空写真からの確認や、現地調査

3番目の航空写真や現地調査による確認はそれほど頻繁ではないため、未申請増築や、未登記の建物の場合、課税漏れ(評価漏)になりやすいと言える。この課税漏れは厳密に言えば脱税と取られてもおかしくないので注意が必要だ。

 

家屋と償却資産について

固定資産税には「土地」「家屋」「償却資産」があると書いた。

基本的に一つの物件に対し「家屋」と「償却資産」が同時に賦課されることは無い。

しかしながら、実務上の問題で二重課税になるケースはあると考えらえる。

「土地」「家屋」については、基本的に登記や現地調査の結果から、自治体より一方的に課税されるものであるが、一方「償却資産」については、所有企業から対象資産リストを自治体へ提出し課税されるものであるため、例えば、「建物」対象資産を償却資産リストに記載してしまったことによる二重課税や、償却資産を登記したことによる「家屋」としての二重課税などのケースだ。

自治体側でも確認はすると思うので、二重課税のケースは少ないとは思うが可能性は0ではない。

 

未登記・未課税だった場合の対応

所有する資産が未登記だった場合、後からでも登記は可能なので、土地家屋調査士に依頼して、測量作業~登記図面を作成し、登記申請を行う必要がある。

その際、課税もされていなかった場合は、登記済通知書が税務課へ送られ、固定資産税の納付通知書が送られてくることになる。場合によっては過去5年分に遡って追加納付が発生する可能性があるため、心づもりをしておいた方が良い。

尚、未登記でも課税だけされているパターンもある。これは前述した通り、建築確認申請からのルートであったり、航空写真や現地調査により課税されたパターンだ。その場合は、単純に登記申請だけ行えばクリアする。

 

以上、建物を新築(増築)した際の、建物表題登記の義務及び固定資産税発生について書いてきた。

建築確認申請上の面積、登記上の面積、固定資産税の課税面積、いずれとも完全一致しない場合があるので、やっかいだが、保有する資産の現況と登記状況さらには固定資産税課税状況について、チェックしてみては如何だろうか。

尚、今回は、建物を新築(増築)した際の、建物表題登記や固定資産税についての関係性の話しとなるため、固定資産税の算出方法や支払い時期等の話しは割愛した。

 

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