+αな暮らし

メーカーでインハウスのファシリティマネジャーとして建築・不動産に関する仕事をしています。このブログでは建築・不動産・施設管理系の資格挑戦についてと、革製品を始めとした愛すべきプロダクトについて書いています。

一級建築士 学科試験 独学勉強法

先日、今年の一級建築士 学科試験の勉強記録についての記事を書いた。

 

前回の記事は、あくまでも今年の勉強記録を書いただけなので、今回は過去4回独学で試験を受け続けた私が、実体験に基づき、今独学で勉強するとしたらこうするという勉強法を書きたいと思う。

 

【CONTENTS】

 

はじめに

独学勉強法を書く前に申し上げたいことが一つある。それは、一級建築士 学科試験に本気で合格したいのであれば、独学ではなくS学院やN学院等の資格学校に通うのが一番早道と言うことだ。

今回の記事の趣旨からはズレてしまうが、それくらい独学で合格するのはハードルが高いと言うことだ。

 

独学が厳しい主な理由は下記の通り。

1.試験範囲が膨大で勉強方法が分からない

2.勉強スケジュールをどう組んでいいか分からない

3.モチベーションを維持できない

これらの問題が資格学校に通う事によってだいぶ解決する。

一方で資格学校の最大の難点はやはり高額ということが挙げられるだろう。学費が会社から補助されるのであれば良いが、そうでない場合、学科と製図セットで100万円オーバーはハード過ぎる。

私もそうだったが、学費が払えないという方は、今回の記事の本題である独学での勉強を余儀なくされることになる。

 

独学に向いた教材

私は過去4回試験を受けたが、この間、様々な教材を使用した。それこそ市販のテキスト&問題集から始まり、ネットオークションで入手した資格学校のテキスト&問題集。さらには過去20年分の過去問が収録されたソフトをPCにインストールして使用する合格物語(現在は合格ロケットという名称に変わっている)、さらには一級建築士ネット講座過去問アプリ、そして今年メインで使用したSTUDYingなどなど。

費用をケチって資格学校には通わず独学を選んだにも関わらず、結果としてかなりの教材代を浪費してしまった。自分で言うのも何だが、ここまで色々な教材に手を出した人はなかなかいないだろう。おそらく20万円〜30万円くらい教材にお金がかかっている。費やした時間も考えると結局、学校に通えば良かったかなと思えるレベルだ。

 

そんな私が、今から独学で勉強する教材を選ぶとしたら、それはやはりSTUDYing(スタディング)になる。

おすすめする理由としては、自分自身が今年STUDYingで合格したのが大きいが、STUDYingは単元毎にWEB講義WEBテキスト→一問一答式のスマート問題→本試験と同じ四択のセレクト問題という流れで勉強を進めていくので、非常に理解しやすい教材であるという事がおすすめする理由だ。

 

STUDYingの感想については下記記事でも書いているので、リンクを貼っておく。

費用が10万円弱(製図講義込み)かかるので、独学教材としては高いが、資格学校に行くのに比べれば遥かに安上がりだ。

 

私は4回目にしてSTUDYingに出会い学科試験を突破したわけだが、過去の点数をさらけ出すと1回目〜3回目までは60点〜70点くらいをさまよっていた。それがSTUDYingを使用した今年は89点と、ギリギリではあったが基準点超えとなった。約20点アップを果たしたわけだが、勉強時間は法令集の線引き時間を含めて260時間とかなり少ない。裏を返せばSTUDYingでの勉強がいかに効率的かを表しているとも言える。もっと時間をかければ更に上の点数も目指せたことだろう。

 

さらにSTUDYingと合わせて使用するべき教材としてTKオフィス 一級建築士 受験対策 過去問アプリもオススメする。

まあ、これは鉄板だろう。スマホアプリなのでどこでも勉強出来るのが良い。電車の中、どうでもいい会議中、トイレ中、寝る前に布団の中などなど… 一度960円を払うだけなので爆安だ。資格学校に通うにしても使用した方が良いアプリとなる。一番コストパフォーマンスに優れた教材と言えるだろう。

 

ちなみにSTUDYingにもアプリ版があるので、WEB講義を聞いたり過去問を解いたりと、同じようにスマホで勉強できるが、やはりちょっとした隙間時間でちょこちょこ勉強するならTKオフィスの過去問アプリの方がお手軽だ。

 

法令集について

法令集についても書いておく。

私は井上書院の法令集が好きで、青本黄本を使っていた。特に黄本は二級建築士の勉強の時から使っているファンだ。今年も黄本を使って合格した。

黄本の良いところはインデックスの質が良いと言うことにある。黄本以外の法令集は小口の上から下までインデックスを貼るため、ページがめくり辛い。一方、黄本は小口の上、3分の2くらいまでしかインデックスを貼らないため、インデックスのないところを使ってページをめくることができる。

また、インデックス自体も小さく邪魔にならない。インデックスの質感もGOODだ。

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(赤丸の部分にはインデックスが無いのでページがめくりやすい)

紙質も良く、マーカーの裏写りもない。

しかし、黄本には致命的な弱点がある。それは他の法令集に比べて分厚いことだ。めっちゃ重い!法令集の1/4を告示が占めているが、一級建築士試験で告示に飛ぶことはほとんどない。(ゼロではないが、ほぼ使わない)

そのため、決して黄本はオススメする法令集とは言えない。では何の法令集が良いのか…それはやはり一番人気の総合資格学院の緑本かと思う。

 

さらに法令集のインデックスについて言及すると、付属しているインデックス全てを貼る必要はない。過去3回の試験では一生懸命インデックスから該当条文を探していたが、今年はインデックスはほとんど使わなかった。基本的には目次から該当条文に飛ぶ癖を付けたので、使ったインデックスはこのあたりのインデックスだけとなる。👇

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建築基準法の別表、消防法の別表、後はオリジナルで貼った「建基法」「施行令」や「規則」といったインデックスたち。これらをそれぞれの目次部分に貼っている。

目次から該当条文に飛ぶようにしたため目次はよく見る。貼るインデックスをまとめると下記のような感じになる。

  • 目次(建築基準法、施行令、施行規則)
  • 建基法別表及び別表用途1
  • 消防法別表
  • 各種関係法令のインデックス全て

黄本に関して言えば、関係法令はほとんど目次がなかった。ちゃんとした目次があったのは建築士法くらいかな。なので、関係法令は全てのインデックスを貼った方が良い。目次がない場合、該当条文に辿り着くためにはインデックスが必要になる。

 

それと、目次から該当条文に飛ぶ場合、自分なりに目次にも手を加えた方が良い。(もちろん本番試験のチェックで引っかからない程度にだが…)参考までに私の使用していた法令集の目次は以下のような感じだ。

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(建築基準法目次)

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(建築基準法施行令目次)

マーカーに、囲み線、P.◯◯というハイパーリンクくらいであればチェックに引っかかることは無いと思うので、自分なりに見やすい目次を作成していこう!

 

法令集についてまとめると、一級建築士に向けて法令集を準備する場合、緑本を準備しつつ、貼るインデックスはかなり厳選し、その分、目次を工夫する感じかな。ちなみに線引きはフリクションマーカーが一番見やすい

 

勉強スケジュールと勉強法

独学が厳しい理由の一つとして、試験範囲が膨大でどう勉強していいか分からない、どうスケジュールを組んでいいか分からないと書いた。

 

STUDYingを使用すればここら辺も解消される。前述の通り、単元毎にWEB講義WEBテキスト→一問一答式のスマート問題→本試験と同じ四択のセレクト問題という流れが出来ているので、基本的にはその順番通り進めていくだけだ。そしてSTUDYingで勉強中の科目と同じ科目をTKオフィスの過去問アプリで隙間時間に勉強すれば知識が補完されると思う。

 

STUDYingを始めるタイミングは早ければ早いほど良い。私は前年の11月から始めたが、確か10月にはリリースされていたと思うので、リリースと同時に申し込みしよう。リリース当初は科目Iの計画と科目IIの環境・設備しかリリースされておらず、構造や施工、法規は準備出来次第、順番にリリースされていく。そのため最初は計画と環境・設備しか勉強出来ないが、逆に割り切って進められるとも言える。法規は最後にリリースされるので、法規の勉強は最後で良い。(ただし法令集の線引きだけは年末年始休み中にしておこう)

 

スケジュール

STUDYingでの勉強を想定しているが、ざっくりと下記のスケジュールになると思う。

  • 10月〜12月:計画、環境・設備、構造文章題(構造までいければ)
  • 年末年始休み:法令集線引き、構造文章題
  • 1月:構造文章題(計画、環境・設備 復習)
  • 2月:構造文章題、構造力学(計画、環境・設備 復習)
  • 3月:構造力学、施工(構造文章題 復習)
  • 4月:施工(構造文章題 復習)
  • 5月:法規 並行して総復習
  • 6月:法規 並行して総復習
  • 7月:法規 並行して総復習

上記基本スケジュールはかなり余裕を持ったスケジュールなので、平日1〜2時間、休日3〜4時間くらい勉強すれば前倒し出来るだろう。

また、終わった科目のスマート問題集やセレクト問題集に定期的に取り組むことで知識の定着を図ることをオススメする。さらには隙間時間を使い過去問アプリにも取り組むと尚良いだろう。5月〜7月の総復習はSTUDYingだけではなく、市販の問題集など他の教材も併用した方が良い。STUDYingは決して過去問収録数は多くないので、他の教材も使い、なるべく多くの過去問に触れるようにした方が良いだろう。

 

次に科目別の勉強法について少し補足する。

 

計画

計画は頑張って勉強しても点数に結びつき難い科目と言える。特に注意すべきは事例問題だろう。事例問題については以前記事にしているのでリンクを貼っておく。

事例問題は出題数が多く、新出問題も出やすいのでなかなか厄介だ。字面だけ見て覚えようと思ってもなかなか覚えられないので実際の建物の写真などとイメージ付けて覚えるしかない。STUDYingには画像がないので、自分で建物をネット検索して調べるか、もしオークションなどで手に入れることが出来るのであれば、資格学校の「コンパクト建築作品集」などを入手すると良いだろう。

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環境・設備

環境・設備はそれほど難しくない。コンスタントに点を取れると思う。逆に疎かにし過ぎないよう注意しよう。過去問でしっかり勉強すればOKだ。

ちょっとした計算問題が時々あるが、難しくはない。私自身がそうだったが、計算問題が出るとめんどくさいからと後回しにはしない方が良い。分からなければ解説をしっかり読んで、同じ問題でも良いので繰り返し解くことで解法手順を身に付けること。一度覚えるとサービス問題となる。

 

構造文章題

構造科目は文章題と力学計算のセットだ。構造文章題は慣れるまでは問題自体、何を問うているのか意味が分からない。構造文章は宇宙語と呼ばれる所以だ。だけど不思議なもので繰り返し解いていると段々と分かってくるので、諦めず根気よく勉強を続けるしかない。コツは頭の中で問題をイメージ化することだ。一問一問イメージ化しなが解くことを習慣付けてみると良いだろう。

また、幅厚比や構造特性係数DSなど値が小さい方が良いもの、逆に値が大きい方が良いものを一覧にして暗記してしまうのもオススメだ。これらを覚えているだけで解ける問題が結構ある。

 

構造力学

構造力学が苦手な人は多いと思う。構造科目30問の内、力学は6問程度と文章題に比べれば問題数が少ないので、苦手な人は割り切って勉強しないという人もいるかも知れない。1回目〜3回目までの私がそうだった。運が良ければ適当マーキングで1、2問くらいは偶然正解になるんじゃね?的な考えだった。結果、3回目の試験の時は6問全て間違えた。

4回目となる今年は初めて構造力学に取り組んだ。勉強してみての感想は、確かに公式を覚えるのは大変だけど、一度公式や解法を覚えてしまえば簡単に解ける問題が結構ある、という事だった。特に「たわみ」の問題などはその典型だ。それと「全塑性モーメント」や「静定構造物」あたりの比較的簡単な問題は逃げずにぜひ取り組んで貰いたい。一方で出題頻度が少ない問題や難易度が高い問題は潔く諦めて時間をかけないようにするのも手かと思う。その分、文章題を多くこなした方が良いだろう。

 

計算問題に関しては、構造力学の勉強を始める前にそもそも分数の計算や三角比、方程式といった基礎の部分を忘れてしまった方がいた場合(私がそうでした!)、オーム社から出ている「計算の基本から学ぶ 建築構造力学(上田耕作著)」で勉強してみては如何だろうか。第一章で計算の基礎として、分数計算や三角比などを簡単に勉強し直すことが出来る。

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第二章以降もこのテキストで無理に勉強するのではなく、STUDYingの構造力学講座を繰り返し勉強した方が試験対策としては手っ取り早い。

 

施工

施工はひたすら暗記だ。細かい数値や似たような数値ばかりなので、なかなか覚えられず苦行に近いかも知れない。

単元によって難易度にもバラつきがあり、施工計画や現場管理などの比較的簡単な問題から、鉄筋工事やコンクリート工事といった単元は難しいと言える。

特に鉄筋の種類ごとの折り曲げ直径や継手長さ、余長などを問う問題、型枠の存置期間、コンクリートの打ち重ね時間間隔や、練り混ぜから終了までの時間などを問う問題はなかなか覚えられず苦労するだろう。

大変かも知れないが、繰り返し過去問を解きながら、地道に覚えるしかない。頑張って下さい!

 

法規

さて、最後に法規だが、この法規でどれだけ点数を稼げるかに合否がかかっていると言っても過言ではない。

法規は構造と同じく30問出題される最重要科目だ。しかも唯一法令集の持ち込みが許可されている科目であり、ここで満点に近い点数を稼げれば一気に合格が近くなる。

それでは法規の勉強法だが、これは一問一問解くごとに法令集を確認するという作業を繰り返すしかない。「なんだ、そんな事か…」と思われたかも知れないが、これしかない。法令集を確認して重要な所に自分なりにマーカーを追加する、この地道な作業の繰り返しだ。法令集を確認する時間が発生するため、他の科目より勉強時間がかかることを見越して進めないと、私のように勉強が終わらぬまま本番を迎える事態となってしまう危険がある。

法規の勉強は時間もかかるが、勉強した分だけ他の科目より結果も出やすいので地道に頑張りましょう!

 

モチベーションの維持方法

眠いとき、ヤル気の出ないときは潔く寝た方が良い。大事なのは勉強時間ではなく「質」だ。眠い中、無理に勉強しても結果として何も覚えていない。早く寝て、次の日の勉強を頑張った方がはるかに良いだろう。

 

また、独学でのモチベーションの維持方法としてInstagramなどで勉強仲間を作るのも刺激になると思う。

 

本番試験について

本番試験で注意するべきことを2点あげる。

一点目は法規科目のタイムオーバーだ。法規以外の科目は逆に時間が余ると思うので、マークミス等ないかゆっくりと見直すことが出来る。ところが法規に関しては見直す時間がない。私は合格した今年ですら全問終わらなかった。法規の試験勉強が終わらなかったことから、本番試験も時間内に終わる可能性が低いことは最初から分かっていた。そこで私はどうしたか…まず計算問題(容積率や建蔽率、高さ問題等)は後回しにした

※法規の計算問題に関しては過去に記事にしているので、リンクを貼っておく。

これら容積率や高さ制限を問う計算問題が毎年3問ほど出るが、特に高さ制限は解法手順が多く、時間がかかるので後回しにした。

逆に一番最初に取り組んだのは建築士法や消防法などの関連法規になる。関連法規は一番最後に約10問まとめて出題される。比較的簡単な問題が多いので、一番最後に回してタイムアップしてしまうのは勿体ない。特に建築士法は関連法規の中で一番ボリュームがある割に簡単で法令集を使わなくても解けることが多い。

まとめると、法規科目で取り組む順序としては、関連法規(約10問)→ 建築基準法(計算問題以外 約17問)→ 建築基準法(計算問題 約3問)という流れだ。

ちなみに、私は後回しにした計算問題に取り組む事なくタイムアップとなったが、適当マークした計算問題が3問中、2問合っているというラッキーだった。まあ、この2問が間違えていたとしても基準点は超えてはいたが…

 

次に本番試験で注意するべきこと2点目。これは全科目共通の注意点となる。

その注意点とは、問題と選択肢を読む時に、目で流し読みするのではなく、凡ミスを防ぐためにシャーペンで線を引きながら、かつポイントを線で囲んだりしながら解くようにしよう、という事だ。

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目で流し読みするだけだと、読み間違いをしてしまったりするなどの凡ミスが発生する可能性がある。法規以外は時間が余るので、一問一問、選択肢をじっくり読む時間がある。焦らず読み間違いしないよう気を付けながら、一問一答式で消去法で確認していこう。

 

以上、一級建築士 学科試験の独学勉強法と、本番試験での注意点でした。今後、独学で受験される方の参考になれば幸いです。私のようにお金も時間も浪費しないよう祈っています。

 

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