建築物環境衛生管理技術者(以下ビル管理士)試験に無事合格した。
今後受験を考えている方にとって、少しでも参考になる部分があればと思い、勉強記録を残しておくことにする。
【CONTENTS】
ビル管理士試験の特徴
まず、ビル管理士試験の特徴として、全部で7科目あり出題範囲が広い試験ということが挙げられる。
難易度も比較的高めで、私が受験した2014年度の直近10年間の合格率は下記の通りとなる。
- 2004年(平成16年):合格率9.8%
- 2005年(平成17年):合格率35.3%
- 2006年(平成18年):合格率9.4%
- 2007年(平成19年):合格率18.4%
- 2008年(平成20年):合格率17.9%
- 2009年(平成21年):合格率18.4%
- 2010年(平成22年):合格率16.7%
- 2011年(平成23年):合格率13.3%
- 2012年(平成24年):合格率32.7%
- 2013年(平成25年):合格率10.6%
10年間の合格率を平均すると18.25%になる。9.4%の年から35.3%の年まで差があるのが分かる。簡単な年に当たるか難しい年に当たるかは運次第だが、9%や10%といった難しい年の翌年は比較的簡単になる傾向がある。2013年は10.6%と難しかったので、案の定、2014年は簡単な年になった。
勉強記録
それなりに難易度の高い試験なので、勉強するに当たり、最初はテキストを通読して、内容をざっくり掴んでみることにした。
私が選んだテキストは、秀和システムの「ビル管理技術者(建築物環境衛生管理技術者)試験 合格テキスト」となる。
A4サイズの2色刷りで、イラストも豊富なので、見やすいと思い購入したのだが、いざ読んでみると内容的には少し物足りなかった。
後から過去問を解いて気付いたのだが、過去問に出てきたことが書かれていなかったり、そして何より誤植が多かった。接続詞がおかしかったり「、」が「。」だったりと、読んでいて気になる部分が多々あった。そのため、あまりお勧めできるテキストとは言えない。2013年に第一版が出た歴史の浅いテキストなので、改訂されていけば改善されるとは思うのだが…
私がビル管理士の勉強を始めた時期は、認定ファシリティマネジャー試験が終わった7月の2週目からとなる。勉強方法としては、まずテキストを一読する事から始め、読み終えたのは8月中旬となる。ちまちま読んでいたので、テキストを読むだけで約一ヶ月かかってしまった。
テキストの内容は、試験科目に合わせて下記の7科目に分かれている。
- 建築物衛生行政
- 室内環境の衛生
- 空気環境の調整
- 建築物の構造概論
- 給排水の管理
- 清掃
- ねずみ・昆虫等の防除
私の場合、この中の2〜5は二級建築士の学科や公害防止管理者(騒音・振動)の勉強した経験が活かせたが、真っさらな状態から始めるとなると、かなりヘビーだと思う。
そして、9月中旬の二級建築士製図試験が終わると同時に、いよいよ本格的に過去問題集に取り組むことにした。選んだ問題集は、テキストと同じ秀和システムの「ビル管理技術者試験過去5回問題集」となる。
この問題集を選んだ理由は価格が1,600円とリーズナブルだったからだが、解答の解説が薄かった。やはり日本教育訓練センターから出版されている赤本にしておけば良かったと後から後悔した。
過去問を取り組んでみた感想だが、想像以上に難しく感じた。試験範囲が広範なため覚えることが多い。そういう意味では過去問に取り組む時間を多めに取ることをお勧めしたい。
私の場合、ファシリティマネジャー試験や二級建築士製図試験の影響で、過去問取り組み期間が一ヶ月しかなかった。今更ながら、無謀なスケジュールだったと思う。
そして、本番試験三週間前から一週間前にかけて、とりあえず過去問を一度やってみた結果は…
【平成25年度】
1.建築物衛生行政 13/20(正答率65%)
2.室内環境の衛生 13/25(正答率52%)
3.空気環境の調整 18/45(正答率40%)
4.建築物の構造概論 9/15(正答率60%)
5.給排水の管理 9/35(正答率26%)
6.清掃 11/25(正答率44%)
7.ねずみ、昆虫等対策 4/15(正答率27%)
合計.77/180(正答率43%)
【平成24年度】
1.建築物衛生行政 13/20(正答率65%)
2.室内環境の衛生 16/25(正答率64%)
3.空気環境の調整 22/45(正答率49%)
4.建築物の構造概論 10/15(正答率67%)
5.給排水の管理 15/35(正答率43%)
6.清掃 7/25(正答率28%)
7.ねずみ、昆虫等対策 7/15(正答率47%)
合計.90/180(正答率50%)
【平成23年度】
1.建築物衛生行政 16/20(正答率80%)
2.室内環境の衛生 17/25(正答率68%)
3.空気環境の調整 16/45(正答率36%)
4.建築物の構造概論 13/15(正答率87%)
5.給排水の管理 14/35(正答率40%)
6.清掃 11/25(正答率44%)
7.ねずみ、昆虫等対策 4/15(正答率27%)
合計.91/180(正答率50.5%)
【平成22年度】
1.建築物衛生行政 15/20(正答率75%)
2.室内環境の衛生 16/25(正答率64%)
3.空気環境の調整 21/45(正答率47%)
4.建築物の構造概論 10/15(正答率67%)
5.給排水の管理 16/35(正答率46%)
6.清掃 15/25(正答率60%)
7.ねずみ、昆虫等対策 3/15(正答率20%)
合計.96/180(正答率53.3%)
【平成21年度】
1.建築物衛生行政 18/20(正答率90%)
2.室内環境の衛生 16/25(正答率64%)
3.空気環境の調整 23/45(正答率51%)
4.建築物の構造概論 10/15(正答率67%)
5.給排水の管理 20/35(正答率57%)
6.清掃 20/25(正答率80%)
7.ねずみ、昆虫等対策 11/15(正答率73%)
合計.118/180(正答率65.5%)
試験一週間前でこのレベル。最後の平成21年度試験だけギリギリ合格ラインだが、かなり厳しい状況だった。
追い詰められた私は、通勤電車の中やトイレなど隙間時間を有効に使うため、藁にもすがる思いで、Appアプリの「2014-2015年版 ビル管理試験攻略問題集」をインストールし、スマホアプリでも勉強を始めた。
ところが、このアプリがなかなか秀逸だった。解説も分かりやすいし、やはり何と言ってもスマホを使って、いつでもどこでも勉強出来るのが良い。アプリの存在に気付くのが遅過ぎた。
実は以前「建築物環境衛生管理技術者」でアプリ検索したときは出て来なかったのだが、改めて「ビル管理」で検索したらヒットした。
このアプリは科目ごとにお金を払って個別にダウンロードするタイプで、試験まで時間が無かったことから、苦手な4科目「空気環境の調整、給排水の管理、清掃、ねずみ・昆虫等の防除」に的を絞って取り組むことにした。
そして、スマホアプリをやりつつ、過去5年分の問題集をもう一回取り組んでみた。2回目は平成21年度から25年度に向かって問題集を1回目とは逆に進め、結果は…
【平成21年度】
1.建築物衛生行政 19/20(正答率95%)
2.室内環境の衛生 21/25(正答率84%)
3.空気環境の調整 32/45(正答率71%)
4.建築物の構造概論 14/15(正答率93%)
5.給排水の管理 30/35(正答率86%)
6.清掃 25/25(正答率100%)
7.ねずみ、昆虫等対策 14/15(正答率93%)
合計.155/180(正答率86.1%)
【平成22年度】
1.建築物衛生行政 19/20(正答率95%)
2.室内環境の衛生 18/25(正答率72%)
3.空気環境の調整 27/45(正答率60%)
4.建築物の構造概論 15/15(正答率100%)
5.給排水の管理 24/35(正答率68%)
6.清掃 22/25(正答率88%)
7.ねずみ、昆虫等対策 15/15(正答率100%)
合計.140/180(正答率77.7%)
【平成23年度】
1.建築物衛生行政 16/20(正答率80%)
2.室内環境の衛生 22/25(正答率88%)
3.空気環境の調整 27/45(正答率60%)
4.建築物の構造概論 15/15(正答率100%)
5.給排水の管理 25/35(正答率71%)
6.清掃 22/25(正答率88%)
7.ねずみ、昆虫等対策 13/15(正答率87%)
合計.140/180(正答率77.7%)
【平成24年度】
1.建築物衛生行政 17/20(正答率85%)
2.室内環境の衛生 20/25(正答率80%)
3.空気環境の調整 30/45(正答率66.6%)
4.建築物の構造概論 9/15(正答率60%)
5.給排水の管理 22/35(正答率63%)
6.清掃 23/25(正答率92%)
7.ねずみ、昆虫等対策 14/15(正答率93%)
合計.135/180(正答率75%)
4年分でタイムアウトとなり、最後の25年度だけ出来なかったが、電車の中や隙間時間で苦手な科目を集中的にアプリで取り組んだので、当然、過去問の点数も上がってきた。
特に1回目では大の苦手科目だった「清掃」と「ねずみ、昆虫対策」はアプリで真っ先に取り組んだ結果、完全に克服し得点科目になった。
「空気環境の調整」と「給排水の管理」はアプリでも手が回り切らなかった。あと一週間欲しかった。
それでも試験直前の段階では、なんとか全体の正答率を70%台には持ってこれた。65%以上で合格なので、本音を言えば過去問では80%以上取れるようにしたかったが、これ以上はさすがに時間がなかった。
試験当日
10月5日。いよいよ試験本番。
最強クラスと言われた台風18号が迫る中、東京の港区にある明治学院大学白金キャンパスで受験した。
試験については午前の部と午後の部に分かれている。
【午前の部】
1.建築物衛生行政/20問
2.室内環境の衛生/25問
3.空気環境の調整/45問
【午後の部】
4.建築物の構造概論/15問
5.給排水の管理/35問
6.清掃/25問
7.ねずみ、昆虫等対策/15問
合計180問の長丁場となる。
合格するためには65%以上の正解、かつ、各科目40%以上の正解とされているので、全科目バランス良く得点する必要がある。次年度に繰り越せるような科目合格はない。
本番試験を終えた直後の感触としては、全体的に難しく感じた。特に建築構造は過去問で見たことのない問題が結構出た。
解答速報
そして、その日の夜から2ch上では、解答速報のまとめ作業が始まった。私も翌日の朝一で2chの解答速報で答え合わせをしてみたところ、127点/180点(正答率70%)という点数だった。全体での正答率65%以上、各科目の正答率40%以上で合格なので、思わずガッツポーズ。しかし2chの解答速報はあくまでも受験者による自己採点なので、プラスマイナス10点くらいはズレる可能性がある。
試験から四日後の9日、JETC(株)日本教育訓練センターのホームページ上で信頼性の高い解答速報が出た。
- 行政概論:17/25
- 室内環境:18/25
- 空気環境:32/45
- 建築構造:13/15
- 給排水:22/35
- 清掃:19/25
- ねずみ・昆虫:12/15
結果は合計133/180(正答率73.8%)だった。
2chの速報で答え合わせをしたときより6点上がった。足切り点以下の科目も無く一安心。
合格発表(2014年は11月4日)
センターのホームページで合格者の番号が発表されると共に、郵送で合格通知が送られてきた。
無事に合格したら、次は免状の交付申請となる。合格通知に同封されてくる交付申請書を書いて2,300円分の収入印紙を貼り付けて指定の宛先へ送付。12月末には免状が届いた。
尚、ビル管理士は建築士や認定ファシリティマネジャーのような写真付きのカードタイプの登録証はなく免状だけとなる。
かかった費用
- ビル管理技術者(建築物環境衛生管理技術者)試験 合格テキスト/秀和システム:3,500円
- ビル管理技術者試験過去5回問題集/秀和システム:1,600円
- 受験料:13,900円
- スマホアプリ料:1,500円〜2,000円くらい(正確な金額は忘れました)
勉強にかけた時間
7月の第二週目〜10月の第一週目までの約三ヶ月弱。9月の二級建築士製図試験前はビル管士の勉強は中断していたので、実質二ヶ月ちょい程度となり、内訳はテキスト通読に約一ヶ月、過去問取り組みは三週間となる。
時間はテキスト通読時は一日平均1時間くらい。過去問取り組み時は、平日1〜2時間、休日は5時間くらいで、トータル勉強時間は100時間程度となる。
ビル管理士試験 おすすめ勉強法
2013年が難しい年だったため、2014年はその反動で比較的簡単な年になり、無事合格することが出来たが、本来ならもう少し腰を据えてじっくり勉強すべき試験だと思う。
また、選ぶべき過去問題集はやはり日本教育訓練センターから出版されている「ビル管理士試験模範解答集」が良いだろう。通称赤本と言われるビル管理士試験の王道問題集だ。
勉強にあたってはテキストよりも問題集のアウトプットに時間をかけ、解説を読んでも理解できないとこだけテキストを参照するやり方が効率的だと思う。試験の半年くらい前からこの問題集にじっくり取り組み、3巡以上やって8割方正解できるようになれば合格する確率はかなり高いと言える。また、過去問アプリで苦手科目を隙間時間に集中的に取り組むことで、合格はさらに近付くだろう。
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