+αな暮らし

メーカーでインハウスのファシリティマネジャーとして建築・不動産に関する仕事をしています。このブログでは建築・不動産・施設管理系の資格挑戦についてと、革製品を始めとした愛すべきプロダクトについて書いています。

一級建築士《構造》 地震力が難しくて自信を無くす

構造の荷重・外力の単元の中に出てくる「地震力」が難しくて自信を無くしているので内容を整理してみることにした。

 

地震層せん断力Qi

まず、建築物にかかる地震力は地震層せん断力となりQiで表す。なぜ地震層せん断力なのか…それは地震力は床に作用するから。そのためiはi階を示している。

そして地震層せん断力は下記の式で成り立っている。

f:id:k-est:20241203095821j:image

見ての通り地震層せん断力Qiは建築物の重量Wiを掛けるため、必然的に地上部最下層(1階部分)が一番重くなり、地震層せん断力Qiも1階部分が一番大きくなる = 一番地震力がかかる

 

さて、ここで物事を難しくしているのが地震層せん断力係数Ciの存在だ。

 

地震層せん断力係数Ci

上記式のところにカッコ書きで書いているが、 地震層せん断力係数CiはZ×Rt×Ai×Coから求められる。アルファベットの各意味は下記の通りとなる。

  • Z:地震地域係数
  • Rt:振動特性係数
  • Ai:高さ方向の分布係数
  • Co:標準せん断力係数

それぞれ内容を補足しておく。

 

地震地域係数Z

地域により1.0〜0.7の値が割り振られており、地震リスクが一番高いところが1.0でリスクが少ないところほど数値が小さくなる。ちなみに0.7は沖縄だけで、主に関東から関西にかけてと東北の太平洋側が1.0となっている。

見ての通り1.0が一番高い数値であとは地域により値が小さくなる低減係数となる。

 

振動特性係数Rt

振動特性係数はややこしい上に過去問でよく問われる重要項目だ。計算式があり下記の通りとなる。

f:id:k-est:20241203101811j:image

Tは建築物の固有周期を表し、Tcは地盤の種別に応じた値となっている。

 

建築物の固有周期Tとは

下記の式で表される。

  • RC造:建築物の高さH × 0.02
  • S造・木造:建築物の高さH × 0.03

分かりやすい例でいくと…

建築物の高さが50mのRC造だった場合、50(m) × 0.02 となり、固有周期Tは1(秒)となる。高さが倍の100(m)の場合、固有周期Tも倍の2(秒)となる。すなわち建築物が高いほど固有周期も大きくなる。

 

地盤の種別に応じた値Tcとは

3種類の地盤種別により、それぞれTcの値は決まっている。

f:id:k-est:20241203103034j:image

第1種地盤はとても固く良質な地盤で、第3種地盤は柔らかく建築物を建てるにはいまいちな軟弱地盤となる。

 

振動特性係数Rtの計算式を前述したが、その計算式自体を暗記するよりも、振動特性係数Rtを分かりやすくグラフにした下記の図を覚えた方が良い。

f:id:k-est:20241203102907j:image

第1種地盤では固有周期Tが0.4までは振動特性係数Rtは1.0だが、それより固有周期が長い(建物が高い)と振動特性係数Rtは小さくなっていく。同様に第2種地盤では0.6、第3種地盤では0.8までは振動特性係数Rtは1.0となり、それより固有周期が長い場合はRtは小さくなる。

すなわち振動特性係数Rtも地震地域係数Zと同様に1.0が一番大きな値となり、あとは固有周期により値が小さくなる低減係数ということだ。

 

高さ方向の分布係数Ai

高さ方向の分布係数であるAiは振動特性係数Rt同様、建築物の固有周期Tに影響され、ややこしい計算式があるが、ここでは計算式自体を覚える必要はなく、下記のポイントを押さえておけば良いだろう。

地上部最下層(1階)のAiは固有周期Tに関わらず1.0となり、上階に行くほど値が大きくなる。なぜか、それは上層になるほど加速度が大きくなるから。すなわち、高さ方向の分布係数であるAiとは地上部最下層が1.0で、あとは上階に行くほど値が大きくなる割増係数となる。

 

標準せん断力係数Co

続いて標準せん断力係数Coだが、これは建築基準法で定めた地震力(加速度)の大きさで下記の3つとなる。

  • 基本:0.2以上
  • 軟弱地盤における木造建築物:0.3以上
  • 必要保有水平耐力計算時:1.0以上

ここでいう0.2(0.3)は一次設計における中地震を想定した加速度で、1.0は二次設計(保有水平耐力計算)における大地震を想定した加速度となる。

※大地震=中地震の5倍程度

 

これらZ×Rt×Ai×Coが地震層せん断力係数Ciとなる。

 

ここで注意すべき点が一つある。

今回の記事の最初の方で、「地震層せん断力Qiは建築物の重量Wiを掛けるため、必然的に地上部最下層(1階部分)が一番重くなり、地震層せん断力Qiも1階部分が一番大きくなる = 一番地震力がかかる」と書いた。ところが地震層せん断力係数Ciは逆で、地上部最下層(1階)が一番小さな値となる。なぜか。それは高さ方向の分布係数Aiによるものだ。1階部分が1.0で上階に行くほど値が大きくなるので、地震層せん断力係数Ciも同様に1階が一番小さく、上階に行くほど大きくなるのだ。せん断力係数Ciでは1階が一番小さいが、せん断力Qiになると建築物の重量Wiが掛かるため1階が一番大きくなるという逆転現象が起きる。過去問でも問われたことがあるため注意が必要だろう。

 

それにしても実にややこしい。

もっとシンプルにまとめた資料はないか… → まとめました。👇

f:id:k-est:20241203123645j:image一枚に情報まとめ

 

これまで書いてきた基本的な内容を押さえつつ、過去問を繰り返し解けば、苦手な地震力の問題を得意科目に変えることができるはず!引き続き頑張りたい。

 

【プロフィール紹介&当ブログについて】