+αな暮らし

メーカーでインハウスのファシリティマネジャーとして建築・不動産に関する仕事をしています。このブログでは建築・不動産・施設管理系の資格挑戦についてと、革製品を始めとした愛すべきプロダクトについて書いています。

一級建築士《法規》結構めんどくさい高さ制限の算定問題

今回は、容積率の算定建ぺい率の算定に続いて法規の3K(嫌い🙅‍♂️)と言われる「高さ制限の算定」について書いていく。

 

高さ制限も結構めんどくさい系のやつになる。

 

【CONTENTS】

 

高さ制限のパターンと適用地域

高さ制限は下記の3パターンあり、それぞれ算定して、結果的に一番小さい数値を建築物の高さの限度として採用する。

高さ制限3パターン

①道路高さ制限 H1

②隣地高さ制限 H2

③北側高さ制限 H3

実際にはこれ以外に一低層・二低層住居専用地域で採用される絶対高さ制限などもあるが、試験での算定問題では上記3パターンで考えておけば良いだろう。

そして、これが重要になるが、上記の3パターン、それぞれ適用される用途地域が違う

適用される用途地域

①道路高さ制限 H1…全ての用途地域に適用

②隣地高さ制限 H2…一低層・二低層住居専用地域以外で適用

③北側高さ制限 H3…一低層・二低層住居専用地域及び一中高層・二中高層住居専用地域のみ適用

このように適用地域が分かれているので、まず問題文の概要図を見て地域を確認する。そして、例えば問題の地域が「第一種中高層住居専用地域」であれば、①②③全てのパターンを算定、比較する必要があるが、これが「商業地域」であった場合は、①②だけで良いということになる。

 

それでは過去問を参考に、具体的な解法ステップを説明する。

 

出題例(H24-法規No.17)

H24-法規No.17問題で見ていこう。

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容積率、建ぺい率と同じく、高さ制限の算定問題は概要図付きでの出題が基本となる。

H24-法規No.17問題の問題文と選択肢は下記の通り。

問題文

図のように、敷地に建築物を新築する場合、建築基準法上、A点における地盤面からの建築物高さの最高限度は、次のうちどれか。ただし、敷地は平坦で、隣地との高低差はなく、また、記載されているものを除き、地域、地区等及び特定行政庁による指定等並びに門、塀等はないものとし、日影による中高層の建築物の高さの制限及び天空率に関する規定は考慮しないものとする。なお、建築物は、すべての部分において、高さの最高限度まで建築されるものとする。

選択肢

1.29.75m

2.30.00m

3.31.25m

4.32.50m

先に正解を言っておくと1番の29.75mが正しい解答になる。

 

解法ステップとしては、最初に挙げた3種類の高さ制限を一つずつ確認していくことになる。確認する順番はどれからでも構わない。

 

今回の設問は概要図を見ると、第二種中高層住居専用地域となっているので「道路高さ制限 H1」「隣地高さ制限 H2」「北側高さ制限 H3」の3種類全て確認する必要がある。

 

ステップ1.道路高さ制限 H1

まず道路高さ制限から確認してみる。

 

(1)前面道路幅員の確認

まずは前面道路の幅員を確認。今回の設問だと、前面道路は一つしかないため、必然的に前面道路幅員は8mになる。

 

これが仮に、道路が2面に接していた場合、次の2点を確認し、その範囲であれば、狭い方の道路も最大幅員を有しているとみなす

①最大幅員の前面道路境界線から、その幅員の2倍以内かつ35m以内

②最大幅員の前面道路以外の前面道路の中心から10mを超える範囲

もし、今回の設問で、前面道路が8mと6mの二つの道路に接していた場合、最大幅員の8m道路の境界線からの水平距離が、その幅員の2倍(8mの倍で16m)以内、かつ35m以内の区域にA点があれば、狭い方の6m道路も最大幅員の8mあるものとみなされる。

 

今回のH24-法規No.17問題では関係ない。

 

(2)A点から道路の反対側の境界線とみなす線までの水平距離Lを確認

ここでいう道路の反対側の境界線とみなす線とは、建築物の後退距離の最小値だけ外側にあるものとみなす線になる。

H24-法規No.17問題を例にとると、A点から敷地境界線までは、建築物の幅が16mあり、A点から建築物の端までが11m、さらに建築物から敷地境界線までが3mとなっている。これに道路幅員が8m、さらに道路の反対側の境界線とみなす線までが3m(建築物の後退距離の最小値)となり、合算するとL=11+3+8+3=25mがA点から道路の反対側の境界線とみなす線までの水平距離となる。

 

(3)適用距離の確認

道路制限の影響は、原則として道路の反対側の境界線から一定の距離の範囲「適用距離」において、適用を受ける。ここでは、(2)で調べた水平距離Lが制限を受けるかどうかを確認する。

L=20m以下…容積率の限度にかかわらず道路高さ制限を受ける

L=20mを超える…容積率の計算を行う

今回の設問ではL=25mだったので、容積率の計算を行う。

ちなみに容積率は前面道路幅員8m×4/10=32/10となる。ここで、法別表第3の出番だ。(は)欄1項により、容積率32/10の適用距離が30mと分かる。水平距離L=25mなので道路制限の影響を受けることになる。

 

(4)斜線勾配の確認

住居系…1.25

非住居系…1.5

今回の設問では第二種中高層住居専用地域なので、住居系となり必然的に斜線勾配は1.25となる。

 

(5)高さの最高限度の確認

(2)の水平距離Lと(4)の斜線勾配をかけた数値が道路高さ制限による最高限度の高さになるので、今回の設問では(2)水平距離L=25m×(4)斜線勾配1.25=31.25mが高さの最高限度となる。

 

ところが、これで終わりではない。

今回の設問の概要図を見ると、敷地高さと前面道路に1m以上の高低差があるので、数値の補正が必要になってくる。

具体的には「敷地の地盤面が前面道路より1m以上高い場合は、その高低差から1mを減じた値の1/2だけ道路面が高い位置にあるものとみなす」となっており、実際に計算すると、高低差2m-1m/2=0.5mとなる。つまり道路面が0.5m高い位置にあるとみなされ、高低差は2m-0.5m=1.5mとなる。

 

道路高さ制限は前面道路中心からの高さになるのに対し、設問はA点における地盤面からの建築物の高さの最高限度を問うているので、(5)高さの最高限度で算定した数値31.25mから高低差1.5mを引いた29.75mが、道路高さ制限による地盤面からの建築物の高さの最高限度になる。

うーん、実にややこしい。

 

道路高さ制限H1=29.75m

 

ステップ2.隣地高さ制限H2

続いて隣地高さ制限を計算する。

 

(1)A点から隣地境界線までの水平距離Lを確認

ここでは、まず隣地境界線までの水平距離Lと、建築物の隣地境界線からの後退距離aを確認する。

今回のH24-法規No.17問題では、

東側がL=7m(A点から建築物の端までが5m+建築物の後退距離が2m)、建築物の後退距離a=2m南側が、L=6m(A点から建築物の端までが2m+建築物の後退距離が4m)、建築物の後退距離a=4mとなる。

 

(2)高さの最高限度の確認

計算式は下記の通り。

①住居系…H2=1.25(L+α)+20m

②非住居系…H2=2.5(L+α)+31m

今回の設問は第二種中高層住居専用地域なので、住居系となり①の計算式になる。

これに(1)水平距離で出た数値の小さい数値(今回は東側L=7m、後退距離a=2m)を当てはめ、H2=1.25(7+2)+20=31.25mが隣地高さ制限による建築物の高さの最高限度になる。

 

隣地高さ制限H2=31.25m

 

ステップ3.北側高さ制限H3

最後に北側高さ制限を確認する。

 

(1)A点から真北方向の水平距離Lの確認

真北が隣地の場合と、道路の場合で水平距離の出し方が違う。

①真北が隣地の場合…A点から隣地境界線までの水平距離Lを確認

②真北が道路の場合…A点から前面道路の反対側の境界線までの水平距離Lを確認

今回の設問では真北は隣地なので、①を確認する。

水平距離L=12m(A点から建築物の端までの距離)+4m(隣地境界線からの建築物の後退距離)=16mとなる。

 

(2)高さの最高限度の確認

北側高さ制限は一低層・二低層住居専用地域及び一中高層・二中高層住居専用地域のみで適用される。そして、低層住居と中高層住居で計算式が違う。

①一低層・二低層住居専用地域…北側高さ制限H3=1.25L+5m

②一中高層・二中高層住居専用地域…北側高さ制限H3=1.25L+10m

となり、今回の設問では、1.25×16+10=30mが北側高さ制限による建築物の最高限度となる。

 

北側高さ制限H3=30m

 

ステップ4.H1、H2、H3の比較

最後に、道路高さ制限H1、隣地高さ制限H2、北側高さ制限H3でそれぞれ算出した値を比較し、最小値をA点における建築物の高さの最高限度とする。

 

H1=29.75m < H3=30m < H2=31.25m なので、結果、道路高さ制限による29.75mがH24-法規No.17問題での解答になる。

 

ふぃ〜 ε-(´∀`; ) 実にめんどくさい。

 

以上、法規の3K(嫌い🙅‍♂️)ラストを飾る、高さ制限でした。

 

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