+αな暮らし

自分の仕事に関係する建築・不動産・施設管理系の資格挑戦記。その他、革靴を中心とした自分の生活に+αな彩りを添えてくれるお気に入りアイテムについて綴っています。

【読書】川瀬七緒さんの「法医昆虫学捜査官」シリーズを読んでみた。

どーもESTです。

川瀬七緒さんのミステリー小説「法医昆虫学捜査官」シリーズ、現在文庫版で4作出ており、この度、立て続けに読破しましたので、以下感想です。

 

【CONTENTS】

 

法医昆虫学捜査官

映えあるシリーズ第1作目。文庫本化になる前の原題は「147ヘルツの警鐘」。個人的にはそちらのタイトルの方が良いと思います。「法医昆虫学捜査官」はサブタイトルで良いですね。実際、2作目以降のタイトル構成はそうなっています。

Synopsis
全焼したアパートから1体の焼死体が発見され、放火殺人事件として捜査が開始された。

遺体は焼け焦げ炭化して、解剖に回されることに。そして意外な事実が判明する。被害者の腹腔から大量の蠅の幼虫が発見されたのだ。しかも一部は生きた状態で。混乱する現場の署員たちの間にさらに衝撃が走る。手がかりに「虫」が発見されたせいか、法医昆虫学が捜査に導入されることになったのだ。

法医昆虫学はアメリカでは導入済みだが、日本では初めての試み。赤堀涼子という学者が早速紹介され、一課の岩楯警部補と鰐川は赤堀と一緒に事件の謎を追う。蠅の幼虫は赤堀に何を語るのか…

f:id:k-est:20180820074740j:image

法医昆虫学という言葉をこの小説で初めて知りました。昆虫の生態を手掛かりに犯人を追うという着眼点が面白いですね。

川瀬七緒さんの小説は初めてですが、焼死体の被害者が司法解剖され、体内から蛆が出てくる描写がなかなかリアルです。女性作家の作品とは思えません。ただ、ところどころバランスの悪さを感じる作品ではありました。殺人の被害者は最初に焼死体で発見された一人と、それだけではミステリとして寂しいと思ったのか、終盤もう一人がついでに殺されますが、殺された動機が弱いです。最初の被害者もどうやって殺されたかは回想で語られることもありませんでした。

題材としては面白いと思いますし、実際シリーズ化されているようなので、この時点では次回作以降の出来映えに期待です。

 

シンクロニシティ 法医昆虫学捜査官

この2作目から法医昆虫学捜査官はサブタイトルになっています。

Synopsis
東京・葛西のトランクルームから女性の腐乱死体が発見された。全裸で遺棄された遺体は損傷が激しく、人相はおろか死亡推定日時の予測すら難しい状態だった。

捜査一課の岩楯警部補は、若手刑事の月縞を指名して捜査に乗り出した。検屍を終えてわかったことは、死因が手足を拘束されての撲殺であることと、殺害現場が他の場所であると思われることの2点だった。発見現場に蠅とウジが蝟集していたことから、捜査本部は法医昆虫学者の赤堀涼子の起用を決定する。赤堀はウジの繁殖状況などから即座に死亡推定日時を割り出し、また殺害状況までも推論する。さらに彼女の注意を引いたのは「サギソウ」という珍しい植物の種が現場から発見されたことだった。

f:id:k-est:20180820075429j:image
デビュー作より面白かったです。しかしながら色々と納得いかない部分、弱い部分なども散見されました。例えば危険を冒してまで死体を葛西に遺棄した理由が弱過ぎる、プロローグから登場する人形師の必要性、殺害現場が簡単に分かり過ぎること…等々

それでも前作より完成度は増している気がします。

 

水底の棘 法医昆虫学捜査官

Synopsis

第一発見者は、法医昆虫学者の赤堀涼子本人。東京湾・荒川河口の中州で彼女が見つけた遺体は、虫や動物による損傷が激しく、身元特定は困難を極めた。絞殺後に川に捨てられたものと解剖医と鑑識は推定。が、赤堀はまったく別の見解を打ち出した。

捜査本部の岩楯警部補と鰐川は、被害者の所持品の割柄ドライバーや上腕に彫られた変った刺青から捜査を開始。まず江戸川区の整備工場を徹底して当たることになる。他方、赤堀は自分の見解を裏付けるべく、ウジの成長から解析を始め、また科研から手に入れた微物「虫の前脚や棘」によって推理を重ねていった。

岩楯たちの捜査と赤堀の推理、二つの交わるところに被害者の残像が見え隠れする。

f:id:k-est:20180820075653j:image

シリーズも3作目となり、回数を重ねるごとにどんどん出来が良くなっている気がします。

今作では新しい登場人物がその特異なるキャラクターぶりを如何なく発揮していました。例えば、鑑識の堀之内巡査部長。被害者のタトゥーが刻まれた皮膚をスキャンした画像にフィルターをかけた画面を見ながらの台詞「これをすると視覚が混乱して脳が補正しようと指示を出す。結果、思わせぶりなチラリズムが始まるんですよ」「見えるか見えないか、ぎりぎりの線でぼくを焦らす行為です。この物件は、かなり挑発的だと言えますね」…もはや鑑識というよりも変質者と言った方がしっくりきますね。

さらには赤堀の生徒の奥田護青年。奥田護青年の特徴を捉えた描写を本文から抜粋。…奥田は張りのない低い声でぼそぼそと喋り、ボードに挟んである記録紙に時間や気温などの数値を書き込んでいった。たったそれだけの動きなのに上腕二頭筋と肘下の腕橈骨筋が盛り上がり、そのさまをちらちらと盗み見ては満足げな顔をしている…いわゆる筋肉マニアです。作者の描写も上手いですね。特異なキャラクターを上手く表現しています。

これら堀之内巡査部長や奥田青年は準レギュラーとしてこれからも登場するのでしょうか。要期待。

 

メビウスの守護者 法医昆虫学捜査官

4作目となるこの作品が、現在文庫化されている最新刊になります。

Synopsis
東京都西多摩で、男性のバラバラ死体の一部が発見される。岩楯警部補は山岳救助隊員の牛久とペアを組み捜査に加わった。
捜査会議で、司法解剖医が出した死亡推定月日に、法医昆虫学者の赤堀が異を唱えるが否定される。他方、岩楯と牛久は仙谷村での聞き込みを始め、村で孤立する二つの世帯があることがわかる。息子に犯罪歴があるという中丸家と、父子家庭の一之瀬家だ。

死後経過の謎と、村の怪しい住人たち。残りの遺体は一体どこに…

f:id:k-est:20180820080023j:image

シリーズ4作目ともなると、かなり作風も落ち着いているので安心して読むことが出来ました。シリーズを重ねるごとに着々と実力を付けている作者です。

遺体に集る虫たちから殺害時刻や場所を割り出すのはいつもの流れですが、このシリーズの特徴は、物語の主役は虫たちではなく、あくまでも人だと言うことです。前作同様、特異なキャラたちが話を引き立ててくれます。今作でも、岩楯とペアを組んだ牛久はもちろんのこと、犯人も突き抜けたキャラ設定でした。

 

 

これにて法医昆虫学捜査官シリーズは文庫版 既刊分については全て読破しました。単行本版では「潮騒のアニマ(2016年10月)」と新作の「紅のアンデッド(2018年4月)」が出ていますが、これらについては文庫本になるのを気長に待つことにします。

 

何度も書きましたが、シリーズを重ねるごとに作者の実力が上がってきていますので、次回作以降の出来映えが楽しみです。