森博嗣先生のS&Mシリーズ、Vシリーズに続き、四季シリーズ(全4部作)を読んだので、記録に残しておく。
【CONTENTS】
四季 春 Green Spring
Synopsis
天才科学者・真賀田 四季(まがた しき)。彼女は5歳になるまでに語学を、6歳には数学と物理をマスタ、一流のエンジニアになった。すべてを一瞬にして理解し、把握し、思考するその能力に人々は魅了される。あらゆる概念にとらわれぬ知性が遭遇した殺人事件は、彼女にどんな影響を与えたのか…
この四季シリーズは、S&Mシリーズ第1作目「すべてがFになる」に登場した真賀田四季を主人公にしたシリーズとなる。
本作は幼少時の真賀田四季を描いた作品で、S&Mの西之園博士やVシリーズの各務亜樹良や瀬在丸紅子も登場し、特に瀬在丸紅子とのやり取りはVシリーズの「赤緑黒白」で描かれた内容と完全にリンクしている。
シリーズを順番に読んでいると面白いが、万一、本作が初めて読む森作品だった場合、訳が分からず「超つまらん」という事にもなりかねないので注意が必要だ。正直、小説としての評価は付けにくい作品に感じるが、当の森先生はそんな他人の評価を気にして作品を書いている訳ではないのだろう。
一応、ミステリー作品として殺人事件も起きるが、正直オマケみたいなものだ。それよりも、シリーズ全体を通したスケール感の大きさに驚かされる。
四季 夏 Red Summer
Synopsis
四季はプリンストン大学でマスタの称号を得、MITで博士号も取得し真の天才と讃えられた。青い瞳に知性を湛えた美しい少女に成長した彼女は、叔父・新藤清二と出掛けた遊園地で何者かに誘拐される。彼女が望んだもの、望んだこととは?
本作は森博嗣氏のデビュー作である「F」に繋がる物語となる。Fではあまり語られることのなかった真賀田四季の過去を描いている。おそらく後付けで考えたストーリーだとは思うのだが、自然な感じで納得のいく内容に仕上げてあるのはさすが森先生。
ミステリー作品として、いままでの作品では必ず殺人事件が起きているが、今回はそれがない。ラストに四季の両親が四季により殺される描写があるが、いままでの殺人事件とは趣きが違っている。
前作の「四季 春」から、引き続き四季の過去を時系列に追っていき、四季の妊娠、そして両親の死まで描かれることで「F」に繋がる…「すべてがFになる」を改めて読み直してみたくなる作品だった。
四季 秋 White Autum
Synopsis
妃真加(ひまか)島で再び起きた殺人事件。その後、姿を消した四季を人は様々に噂した。
現場に居合わせた西之園萌絵は、不在の四季の存在を、意識せずにはいられなかった…犀川助教授が読み解いたメッセージに導かれ、2人は今一度、彼女との接触を試みる。
本作はS&Mシリーズの続編とでも言うべき内容となっている。時系列で見るとS&Mシリーズ最終作の「有限と微小のパン」の後の話しで、Vシリーズの第8作「捩れ屋敷の利鈍」の後の話しでもある。
S&Mシリーズの犀川助教授と西之園萌絵を中心に話しが進み、Vシリーズの保呂草淳平と各務亜樹良コンビも主要キャストとして登場する。四季シリーズでありながら、真賀田四季本人の出番はほとんどないが、それでも凄い存在感を物語を通して感じることが出来る。
各シリーズが見事にリンクし、特にデビュー作「すべてがFになる」で語られることが無かった謎が本作で明らかにされるなど、森先生の構成力には相も変わらず驚かされる内容だった。脱帽。
四季 冬 Black Winter
Synopsis
「それでも、人は類型の中に夢を見ることが可能です」四季はそう言った。生も死も、時間という概念をも自らの中で解体し再構築し、新たな価値を与える彼女。超然とありつづけながら、成熟する天才の内面を、ある殺人事件を通して描く。
うーん…何というか、もはや普通のミステリー小説ではない。これはさすがに今までの森博嗣作品を全て読んでいないと訳が分からない。今までの四季シリーズとはまた違った作風で、各節毎に場所だけでなく、時代も飛んでいく。第4章の最後の節では「その百年が過ぎた」とあることから、真賀田四季は百年後の世界を生きていることになる。人間と区別が付かないロボットまで出てくるし、ミステリーというよりSF作品になっている。個人的にはちょっとやり過ぎかな…と感じた。
場所や時間が飛ぶだけでなく、今までのシリーズを順番に読んでいてもよく分からない内容や謎のキャラクターも出てくるので、より理解し難い内容となっている。
何はともあれ、これで四季シリーズ4部作、すべて読み終えた。次からはGシリーズに突入する。